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エミールさんとの対話
2010-02-17-Wed  CATEGORY: イスラエル
アコーディオニストのエミールさんと数日一緒に過ごす中で、いろいろな対話がありました。
その内容がとても興味深いものでしたので、少し紹介しましょう。

1)なぜアコーディオンを始めたのか
エミールさんがまだ6歳のころ、故郷のモルドバに住んでいた。エミールさんは貧しい家庭で、向いに金持ちの家庭があり、その家の子供が週になんどかアコーディオンのレッスンを受けていた。エミールさんはレッスンの様子を毎回毎回ずっと外に立って眺めていた。それが何カ月も続くので、アコーディオンの先生(女性)が、エミールさんの母親に会いに来た。
「6歳の子供がレッスンの間中、身動き一つしないでずっと立って聞いている。あの子はどこか精神を病んでいるか、とてつもない天才かどちらかだ。アコーディオンを習わしてみませんか」と言われた。しかし貧しい家庭だったので母親は「そんなお金はない」と答えた。するとその女性の先生は、なんとアコーディオンをエミールさんにプレゼントして下さり、半年間ほぼ無料のようなレッスン料金で教えてくれた。
エミールさんは半年で、ふつうの子どもが三年かかって学ぶほどの上達をした。その後その先生が別の先生を紹介してくれてさらにアコーディオンを学び続けた。

2)イスラエルの帰還する時の夢の話
イスラエルに帰還したのは1990年。帰還しようと決めたのは、もちろんこの時代に旧ソ連から大量のユダヤ人が
イスラエルの帰還するという大きな波があったからだが、それ以前にモルドバではものすごく強い反ユダヤ主義があった。音楽アカデミーに入る時もユダヤ人というだけで高額なお金を積まなければ入学もさせてくれない。(これについても感動的な話があるのですが、今回は割愛)
プロになってあるコンサートに出演して、自分がソリストとして演奏しても、自分の名前が「アイビンデル」というユダヤ名なので、名前さえ皆の前で紹介されない、など、あからさまな反ユダヤ主義があったから、ためらわずイスラエル帰還をした。

イスラエルに向うほんの数日前、ある夢を見た。それはエルサレムのレストランでアコーディオンの演奏をする夢であった。やがてイスラエルに帰還し、ある日エルサレムのレストランと演奏の仕事を契約することになった。
契約を終わって周りを見てみると、はじめて行ったレストランのはずなのになぜか見覚えがある。しかし奥さんのローザさんに「たしかにここには以前来たことがある」と話しても、「そんなわけないでしょう!」と言われる。
それでよくよく思い出してみると、イスラエルに来る数日前の夢でみた風景が、そのまま現実になっていることに気付いた。

3)ローザ夫人への愛
このように、じつにドラマチックな人生を歩んで来られたのですが、その背景にはローザ夫人の献身的な支えがあったのでしょう。奥さんへの愛情の深さは尋常じゃありませんでした。
面白いエピソードを聞きました。かつてエミールさんがある若い女性歌手と共演したときのことです。コンサートのあと、その歌手がエミールさんに「記念撮影してください」と言いながら近づいてきて、肩を組むようにして写真を写したそうです。それを見ていたローザさんが「それ以上、近づいちゃダメ!」と叫んだので、エミールさんは危険を察知し、それ以来二度と彼女とは共演しなかったとか。エミールさんいわく「ローザを失いたくないからね」。

今回、ある歓迎会で女性数名が、北海道開拓時代の苦労を歌った演歌「石狩川」の踊りを披露してくれる場面がありました。その歌詞の内容に「母も女房も強かった」とありますが、その内容を聞いたエミールさん、すかさず「これはローザの歌だ」。エミールさんがどんなに頑張っても、実力があっても、反ユダヤ主義で苦しんだモルドバ時代、またイスラエル帰還をしてからのさまざまな苦労の時代、本当にローザさんが支えておられたんだな、とうことを痛感しました。

最後のおのろけは、京都で舞子さんの踊りを見たあとのこと。こっそりと、大真面目な口調で耳打ちしてくれました。「彼女は本当に美しい。でもローザの若いころは、もっと美しかったぞ」。




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